経理の実務|新しい担当者が迷わない、最初の1か月の引継ぎ

新しい経理担当者を採用しても、資料の場所や確認相手が分からなければ仕事は進みません。最初の1か月で何を渡し、どこまで任せ、何を確認するか。引継ぎを受ける人と教える人の双方が使える進め方を紹介します。

初日は「会社の経理の地図」を渡す

初日から大量の操作手順を説明するより、まず仕事の全体像を共有します。売上が発生してから入金されるまで、請求書が届いてから支払われるまでを、関係する部門と一緒に説明してください。

最初に渡したいのは、次の5点です。

  • 月間スケジュール:作業日、社内締切、確認者
  • 業務担当表:主担当、副担当、承認者
  • 資料の保存場所一覧:どのフォルダの、どのファイルを使うか
  • システム一覧:用途、必要な権限、利用申請先
  • 相談先一覧:業務ごとの確認相手と、不在時の連絡先

個人のパスワードを渡すのではなく、会社の管理ルールに沿って本人用のアカウントと必要な権限を用意します。業務担当表にはパスワードを記載しません。

1週目は、作業を一つ、最初から最後まで一緒に行う

例えば請求書の処理なら、「受領した資料を確認する」「対象の取引を確かめる」「入力する」「確認者へ回す」「所定の場所に保存する」という一連の流れを一緒に行います。

説明する側は、クリックする場所だけでなく、何を確認しているかを言葉にします。入力が終わっても、確認や承認が終わっていなければ、業務としては未完了です。

最初の練習は過去の処理例などを使い、本番の支払実行や承認と混同しないようにします。実際の業務は会社で決めた確認・承認の手順に従います。

2週目は、本人に操作してもらい、詰まった場所を記録する

教える人が操作し続けると、説明を聞いた人が一人でできるか分かりません。次は担当者本人に操作してもらい、教える側が確認します。

止まったときは、「なぜ分からないのか」と問う前に、どの情報が足りないかを確認してください。保存場所が曖昧なのか、判断基準がないのか、権限が足りないのかで、必要な対応は変わります。

質問は「対象業務/止まった箇所/確認相手/回答/手順書への反映」の5項目で残します。同じ質問を次の担当者も繰り返すなら、説明を個人の記憶に留めず、資料に追記する必要があります。

3週目は、定型業務を任せ、例外は相談してもらう

任せる業務は、開始条件と完了条件を決めます。「請求書を処理する」だけではなく、「必要資料がそろったものを入力し、確認者に回して一覧の状態を更新する」まで具体化します。

一方で、金額や取引内容に疑問があるもの、過去の処理と整合しないもの、承認が確認できないものは、本人だけで進めない相談対象にします。何を相談すべきかが明確なら、質問もしやすくなります。

4週目は、一度の月次業務を振り返る

最初の月次業務が終わったら、できた作業、確認が必要だった作業、未経験の作業を分けます。「1か月たったから独り立ち」とせず、業務ごとに確認します。

  • 必要な資料を自分で探せたか
  • 作業の期限と確認者を把握できたか
  • 手順書を使って処理できたか
  • 判断できない点を、適切な相手に相談できたか
  • 処理後の資料と確認記録を保存できたか

翌月も付き添いが必要な作業を決め、副担当も共有します。年次業務など、まだ経験していない仕事は別途引継ぎ予定を残してください。

そのまま使える引継ぎ記録の書き方

一つの業務について、次の形で記録すると、進み具合を共有しやすくなります。日付や役職は自社の運用に合わせて記入してください。

  • 業務名:受領請求書の確認・入力
  • 開始条件:請求書と取引内容を確認する資料が届いている
  • 社内締切:毎月○日。休日の場合の扱いも記載
  • 保存場所:共有フォルダの具体的な場所
  • 担当・確認者:担当者名、確認者名、不在時の代替者
  • 完了条件:入力・確認を終え、資料を保存し、一覧の状態を更新
  • 相談する場合:資料不足、金額の不一致、承認不明、通常と異なる取引
  • 引継ぎ状況:説明済み/一緒に実施/本人が実施して確認済み

「説明済み」と「本人が実施できる」は別の状態です。この違いを記録しておくと、任せる範囲を決めやすくなります。

受け入れる側の準備も、引継ぎの一部

新任担当者だけに「早く慣れてほしい」と求めても、確認相手が不在で、資料の場所が分からない状態では進められません。教える時間と質問を受ける時間を、受け入れ側の予定にも確保しましょう。

磯部会計事務所では、業務の棚卸し、手順書の整理、後任者への引継ぎを支援しています。サービス紹介をご覧ください。

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